Hayato Kumagai
Hayato Kumagai
個展
北を走る太陽
2023.02.24-03.05
マ・シマシマ

“タイガの狩猟民は、太陽をも巨大なオオシカという生きた存在として考えた。太陽は一日のうちに天空を駆け抜け、夜は無限の下界へ沈むのである”
(アレクセイ・オクラードニコフ 「黄金のトナカイ」より)

太陽を背に北へ向かう
その足取りは止められない
やがて来たる死
そんなものよりもっともっと先へ
見えない角で世界を割き
聞けない叫びで闇夜を裂いて
北へ 北へ まだまだ北へ

久しぶりの、そして北海道に移住してから初の個展となります。
新たに描いている切り絵の生きものがメインとなる予定です。
2月末の網走、オホーツク海に流氷がやってくる時期に合わせての展示となります(既に到着しているようです)。
なかなかアクセスは大変かもしれませんが、遠くの方もこの機会によろしければぜひ、いらしてください。
(本州からも網走・女満別空港へ幾つかLCCが出ているようです✈︎)
よろしくお願いします🦌

✳︎

網走マ・シマシマでの個展は3/5をもちまして、無事に終了しました。
オーナーの愛美さんと恒雄さん、道内外からお越しくださったみなさま、来ることは出来ずとも気にかけてくださったみなさま、そして様々なかたちでご協力くださったすべての方々に、心よりお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
作品をご購入くださったみなさまには、お渡しまでもう少しお時間をいただくこととなりますが、ゆっくりと楽しみにお待ちいただけますと幸いです。
(以下、振り返りの長文となります。)

個展を開催したのは、じつに3年8ヶ月ぶりのことでした。北海道で暮らすなかで自らを駆け巡った幾つもの体験が、今回の展示で堰を切ったように溢れ出てきたように思います。
鹿を追いかけてきたこと、北方民族にすっかり魅了されてきたこと。大人子ども問わずみんなで一緒に絵を描いてきたことで、すべての色彩が解放されていったこと。
おそらく以前よりずっと、群れをなす生命の循環を絵に描こうとすることにためらいがなくなりました。その光はまばゆくともあらゆるものたちに宿っていることを、以前にも増して信じているからなのかもしれません。ひとつの強固な自信というより、無数のちいさな確信のようなものをもって。

今回展示するに至ったきっかけは2年前、マ・シマシマが5月1日(僕の誕生日でもあります)にオープンした時にたまたま自分がお客第一号として伺ったことでした。以前アートワークを担当したarca「世界」のCDを愛美さんが大切に聴いてくださっていたことから話はすぐ繋がり、いつかこちらで展示を、とその場でお話をいただいていたように記憶しています。その時マ・シマシマで行われていた恒雄さんの絵の展示も印象的で、この場所から新しい風が吹いていくこと、それが多くの方たちにとって希望となることが、鮮やかに予感されました。

時を経て2022年初冬、あらためて展示のお誘いをいただいた時にマ・シマシマはまさにそれを体現する場となっており、僕自身も北海道の暮しに馴染みふたたび制作活動に意欲を向けはじめた頃で、このうえないタイミングでの個展の実現となりました。
網走というまだ決してたくさんの繋がりがあるわけではなかった土地で、一体どれほどの反響を残せるだろうと思っていましたが、美幌の森音さん(@morion.hokkaido )をはじめ様々なお店の方たちによる宣伝やSNSでの情報波及も手伝って、道内外からたくさんの方々が足を運んでくれました。中には東京や関西からいらっしゃる方も。
個人的には、流氷を見るためにふらりとカフェで訪れた、普段展示を観る機会の少ないであろう若い世代の人たちに展示を楽しんでいただけたことも嬉しい出来事でした。それはマ・シマシマが窓口の広い場所であるからこそ生まれた交流なのだと思います。

最終日、Closing PartyでのAirdaさんとのライブペインティングでは、それまで在廊中に即興で描いてきた絵が合わさって、色鮮やかなオオシカが生まれました。僕が根室で拾った鹿の角をAirdaさんが楽器にしてくれたり、今回の展示のメインでもある切り絵の生きものたちと呼応するように生まれた幾つもの音像たちが会場に広がり、草原や流氷など北海道の幾つもの風景が呼び覚まされるようでした。道東という土地に魅了されながら過ごしてきた日々が、たしかに結実した瞬間でした。まばゆく濃密な時間を共有してくださったAirdaさんと急遽制作を手伝ってくれた下山明花さん、そしてお集まりくださったみなさま、どうもありがとうございました。

個人的には、今回本当にたくさんの絵が旅立つこととなり、新卒時の月収を越える額を絵の展示ではじめていただけたことが、静かに感慨深くもありました。これから巨きな絵を巡回展示するにあたり大変幸先の良いはじまりとなりましたが、これからも相変わらず着実に、ひたむきに歩き続けていきたいと思います。

長々と書いてしまいましたが、素晴らしい場を提供してくださったマ・シマシマの愛美さんと恒雄さんに、あらためて感謝を申し上げます。展示DMの配布から展示期間前・期間中の告知など、僕があまり手を回せずにいたところをたくさん奔走してくださっただけでなく、絵の展示方法についてのアドバイスなど、助けられた点を挙げればきりがありません。滞在中の宿泊準備なども至れり尽くせりで、おすすめのお食事処のご紹介から電気ポットにお湯を絶えず用意してくださっていたことまで、お二人の細やかなお気遣いが行き届いていて、心温まることの絶えない日々でした。本当にありがとうございました。またマ・シマシマで展示するときを、今から心待ちにしています。

最後に、作品制作から搬入出作業、在廊中の対応や撮影まで、あらゆる点でサポートしてくれたパートナーの邑里さんにも感謝を。ふたりでの生活・制作のリズムも今回で見えてきて、これからのことが楽しみでいっぱいです。