Hayato Kumagai
Hayato Kumagai

title風の樹
date2025年9月
mediumネパール手漉き紙、アクリルガッシュ
size526×650mm

まだ葉の付いた枝が地面に落ちているのをじっと見つめるとき、葉が翼に、枝が胴体のように見えることがある
すぐそばの樹から落ちてきたであろう一本の枝葉は、もしかすると私たちの知らない旅の記憶を、その身に宿しているのかもしれない
植物たちのもつ身体性や空間認識、その方位感覚は、動物である私たちにとってのそれとおよそ異なる、想像の及ばないものなのだろう
樹木が地下に張り巡らせた根にとって、天地を覆してみれば地上に広がる枝葉はむしろ、陽光と空気に浸された大気を吸収する根なのかもしれない

下降して地面に衝突する枝葉もまた、太陽へと向けて高く舞い上がり、遂には星になるよだかの姿とどこか重なる ※
地上に星のように散りばめられた枝葉は、やがて風化していき、いつかふたたび世界の因子となる

※宮沢賢治「よだかの星」より。鳥のよだかは醜い外見のために他の鳥たちから疎外され、自分よりも弱い虫たちをたくさん食べてでも自らが生き長らえることを嫌悪し、ついには生きることそのものに絶望する。そこで太陽に向かって「焼け死んでもいいからあなたの元へ行かせてください」とお願いするが星々に願いを叶えてもらうよう言われ、その星々にもまるで相手にされなかった。よだかは命をかけて夜空へと飛翔し、そのはてに青白い星となった。よだかの星は今も夜空で燃え続けている。

台北のギャラリー山竹での個展に向けて、2025年9月に制作した一枚。