小豆島で橡人（もくじん）という名で活動する友人家族のために、シンボルとなる絵を描かせていただきました。
自分と同い年の夫婦・ひろくんとばたちゃんから絵のご依頼を受けたのはもう2019年のこと。自分自身そこから状況が目まぐるしく変化してしまい、長らく絵の仕上がりをお待たせしてしまったにも関わらず、ふたりは小豆島でのようすを折にふれて話してくれながら、辛抱強く完成を待ってくれました。

絵が突如として形をなしたのは2022年11月のこと。彼ら彼女らの暮しを直に感じてみなければ、と10月にようやく初めて小豆島を訪れたとき、それまで幾つか描いていた仮案には表せていなかった彼らの「野生」に強く触れたことが、絵にたしかな息吹を与える転機となりました。
キャンプ暮しをしながら、築100年の古民家を手探りで改修し続けるひろくんの逞しい姿や、美味しくて美しい手料理でそれを支えるばたちゃんの朗らかさ、ふたりの娘である葉ちゃんの愛くるしくも豊かな表情（変顔も！）、そしてどこまでも人懐っこくあちこち走り回るサン。
とくに印象的だったのは、ふたりのまだ幼い息子であった野生（やお）の存在。久しぶりに再会し彼らの住まいへと向かう途中、野生は僕の腕を嗅いだかと思った次の瞬間、ガブリ！と噛みついてきたのでした。
生命感に満ち充ちた彼ら彼女らがその瞳に宿す光は小さな惑星のようであり、その発露として遊び祈り躍動する彼らの四肢が、絡みあう樹の枝の姿と重なったとき、ようやくこれだ！と思えるイメージが見えたのでした。

黒橡（くろつるばみ）色で表した天地無方なこのシンボルが、これから長きに渡ってくぬぎ家のお守りとなってくれますように。

橡 人 -もくじん-
@mokujin_kunugi