二ヶ所目
雨灯(新潟・新潟市)
2023/6/27~7/8
巡回展二ヶ所目は、熊谷の地元・新潟にあるお店、雨灯で行われました。
雨灯のオーナーの野呂巧さん曰く、雨灯が生まれたのは2023年春のことで、すぐ近くで野呂さんが営んでいるお店"ウチノ食堂"から、種が溢れるようにして生まれたお店だといいます。
自分が野呂さんと出会ったのは2020年、かつてCDとレコードのアートワークを描かせていただいた「世界 / arca(haruka nakamura & LUCA)」をウチノ食堂でお取扱いされていることがきっかけで繋がりました。それ以来新潟へ帰省するたびにウチノ食堂を訪れては、ゆっくりと寛ぎながらも野呂さんに旅の話を聞いていただく、止まり木のような場所となりました。(当時自分は北海道移住を考えており、新潟と北海道を頻繁に行き来していました。このタイミングでご一緒できて、とても嬉しかったです)
野呂さんはかつて世界各地を旅した方であり、自分と似たように”根を持つことと翼を持つこと”に思いを巡らせながらも、今はお店や料理をとおして、その灯をともし続けています。
新しいお店の構想とその名前(雨灯)について野呂さんからお聞きしたとき、新潟で巡回展をするならぜひそこで、と内心密かに想っていたこともあり、実現が決まったときは本当に嬉しかったです。しかも実はこれが新潟ではじめての展示でした。
巨きな絵全体を広げるだけの十分な空間が雨灯にはなかったため、奥にある部屋の天井・壁・床に沿わせる形で絵を変形させて展示することに。ほのかな灯りでともすと、洞窟のような空間が出現しました。
ちょうど梅雨の時期だったこともあり雨の時間帯も多く、はからずしてお店の名前をそのまま表すような時間が流れていたように思います。
会期中、7月1日は深夜営業日として24時までお店を開き、さらにこの日限定で日没後にパンとスープをご提供いただきました。パンは雨灯から車で10分ほどの距離にあるお店"薪窯パン舎 ほほ"から、この日のために風の舟に見立てて焼かれたというパンを、スープは雨灯から、モロッコのラマダン明けに飲まれるというスープ”ハリラ”を。いずれも特別な夜の時間を彩る、素晴らしいお味でした。
(ちなみに"薪窯パン舎 ほほ"を営む佐護夫婦はもともと十勝に住んでおり、自分が十勝に移住したタイミングで知り合い、当時よくお家に遊びに行かせてもらっていた仲でした。このタイミングでご一緒できて、とても嬉しかったです。)
また7月7日・七夕の夜には、野呂さんと巨きな絵の前でお話会を行いました。 窓越しに二人で絵を眺めながら、絵の中に描かれた物語を読み解きつつ、描くこと、生きること、そして巨きな絵の行く末について、気がつけば二時間にもわたり、静かにお話を広げていました。お客さんは決して多くありませんでしたが、その分濃密な時間を過ごせたように思います。
会期中は地元ということもあって、中学・高校時代の同級生や、大学時代の後輩、母や双子の兄も観に来てくれました。
それ以外にも、北海道で自分が拾った鹿の角を手に取り、まるで自らの野生をそこに見出したかのように夢中になる人や、巨きな絵の前で絵の物語をとても熱心に聴いてくれる小さな男の子など、印象に深く残るお客さんとの時間を多く過ごすことができました。
巡回展の序盤のはずなのに、最後に絵を燃やす日のことについて話すことが多かったのも心に残りました。
雨灯のスタッフとしてこのとき働かれていたほしこさんと、たくさんお話ができたこともよい思い出です。(ほしこさんのプリン、絶品でした…!)
お越しくださったみなさま、野呂さん、ほしこさんに心からの感謝を。